このWSの概要
9日間のワークショップで、リピテションエクササイズを中心としたマイズナーテクニックのトレーニングに集中的に取り組み、最終的に台本を使ったシーンワークで、このテクニックがどのように演技に活かせるかを探求します。
(リピテションエクササイズ:ペアになりパートナーを観察し、相手の挙動を言葉にし、お互いその言葉を繰り返す。単純な繰り返しにより思考から離れ、真実のある演技を目指すためのエクササイズ。コンスタンチン・スタニスラフスキーのアメリカでの弟子、サンフォード・マイズナーが考案した。アメリカをはじめ、ヨーロッパ、アジアなど世界中で舞台・映像問わず俳優の基礎的な演技法として実践されている)
マイズナーテクニックの一番の特徴を端的に説明すると
「自分に起こることは、自分の内側ではなく相手がすることによる」という考え方です。
様々な演技法の落とし穴は、感情や台詞やキャラクターを表現しようとして俳優が内向きになることです。その結果、相手や状況にそぐわないズレた演技をしてしまうことがあります。相手との関係が切れてしまっているので観客にとっても「なんか面白くない」ものになってしまいます。
一番大事なのは目の前にいる相手だという考え方は、俳優を自意識やエゴから離れさせ、相手やその状況に応じた「真実の状態」でいさせることを容易にします。真実をもって生きる演技は、舞台はもちろんのこと、俳優の内面で起きているものを映し出す映像での演技にも大いに使えます。
マイズナーワークショップでは、技術的なことに加えて稽古場の環境づくりを大事な要素としてファシリテートしています。毎瞬間、真実の状態で他者と関わるからこそ、俳優が自分のことを心配しなくても良いと思える安全な環境が必要です。ポジティブな環境で、のびのびとチャレンジしてもらうことを心がけています。
ハラスメント防止ガイドライン
西村壮悟および、西村壮悟が主催するマイズナーワークショップはあらゆるハラスメント、特定の属性を持つ個人や集団を対象にした差別的発言・行動に反対します。
「共に創作をする、あるいは共に演技トレーニングをする仲間の存在価値を認め、敬意を払う」という価値観を最重要視します。
まず、当ワークショップで行うマイズナーテクニックは主となるリピテションエクサイズが「そのとき相手から受けた刺激によって生じた衝動のままに反応する」ものである特性上、身体接触を全て禁止とすることは演技トレーニングとしての効果を損なうため、しません。
健全なトレーニングを逸脱することを起こさないために、まず上記の価値観を参加者の方にも周知するとともに、参加者が安全に取り組めるようにルールを設定します。
【ワークショップが安全で健全に進行されるよう以下の対策をとります】
全ての参加者が心理的に安全と感じられるような環境を作るようにします。
具体的には、
・ワークショップ内で行うエクササイズは参加者個人のセクシュアリティ・年齢・経験等に配慮して進行します。また、上記のような参加者個人の属性に基づいた差別をしません。
・エクササイズの意図やルールを説明します。
・講師は参加者に対して暴言や暴力、恫喝、強要、威圧的な態度、無視等の行為をとりません。身体的な接触は指導のために必要な場合だけ、社会通念上適切な箇所にのみ行います。
また、リピテションエクサイズにおいても、その他のエクサイズにおいても、身体接触がある場合は説明をします。(基本的に講師は参加者に許可をとってから身体に触れますが、緊急の場合は許可をとらずに参加者の身体に触れて止める場合があります。例:参加者同士の意図しない危険な接触や怪我を避ける場合)
・エクササイズの内容に不安がある場合、参加者はそのエクササイズへの参加を拒否することができます。また、講師は参加者の意見に合わせてエクササイズのルールを変更する等の対応を努力します。
・参加者の方に性的表現や不必要な身体的接触を要求したり、あるいはプライベートな事柄を開示するよう要求することはしません。
・台本を扱う際、性的表現や身体的接触、あるいは暴力が書かれているような場合、それを実行するよう求めることはしません。
・エクササイズに対してのフィードバックや感想など意見交換をうながし、どの参加者も発言の機会が得られるようにします。
・参加者にも他の参加者や講師に対するハラスメント、ヘイトスピーチや暴言、暴力等の不適切な行為を控えていただくようお願いします。万が一上記のような行為があった場合には、ワークショップを進行する講師として断固とした対応をとり、場合によってはその方の参加をお断りし、退室していただきます。
・万が一、参加者間でエクサイズを逸脱するようなハラスメント行為が生じた場合、講師および主催者は迅速かつ正確に事実関係を確認し、両者に対して適切な措置をとり、再発防止のために必要な措置を講じます。
・参加者からいただいた連絡先へ、ワークショップの告知以外で連絡を取ることはしません。
・参加者から進行に関してご意見や苦情をいただいた場合には速やかに対応をとります。
・このガイドラインは、随時ふり返りを行い、必要に応じて改訂していきます。
講師からのメッセージ
サンフォード・マイズナーは演技を「与えられた状況設定のなかで真実をもって生きる」ことと定義しました。
演技の要素を分解し段階的に技術を積み上げていきます。そのため、このWSではいきなり「台本をやってみよう」とはしません。
まず、リピテションエクササイズで、相手を観察する力と、衝動のままに反応する力を鍛えます。「衝動のままに反応する」のは、その人が身につけた社会性や礼儀正しさなど自分を制限しているものを一旦外す必要があるのでチャレンジングですが、これができるようになると反応の幅が広がり、大胆さと演技の可能性が格段に増します。
そして「与えられた状況設定」を把握する力を鍛え、台本を演じるために必要な要素を構築していきます。
土台となる技術を固めてから、台本分析を一番最後にやり、積み重ねたテクニックを使って実際にシーンを演じます。
全部で9日間と聞くと長く感じるかもしれませんが、本来であればもっと時間をかけて学んでいく過程を短期間に濃縮したWSです。
愛するにしろ憎むにしろ、他者に影響を与えあい関わるのは、
たとえそれが虚構のなかであっても勇気が要ることで、怖いことでもあります。
でもそこに踏み込み、俳優の心が本当に響き合っていれば、必ず観ている人の心を動かす美しい瞬間が生まれるはず。
チャレンジングで楽しく、返ってくるものが多い時間になるのは間違いありません。
未知に飛び込み、どこに行くか分からないということも含めて、一緒に楽しみましょう。
このワークショップを受けるメリット
- ポジティブで安全な環境のなかで失敗や批判を気にせず挑戦できるので、自分の表現の幅を広げることに集中できる。
- 相手を受けた演技ができるようになる。演技に即応性・柔軟性が生まれる。
- 演技を邪魔する自意識から離れる術を見つけられる。
- 俳優として扱える反応の幅を広げられる。
- 俳優としての自由度が上がり、個性を出せるようになる。
- 自分の直感や本能をより信じられるようになる。
- 学んだテクニックを実際にシーンスタディで実践できる。
- コース終了後は毎月開催のリピテション会やシーンクラスに参加することができます。「俳優としてベースとなる技術を継続的に磨く場」が得られます。
使用するテキストは葛藤がはっきりと描かれているシーンを使用します。この先どんなスタイルのお芝居をやっていくにしてもベースとなる技術を身につけていきます。(明確な葛藤を描いていて、ある程度の尺のあるシーンを選ぶので翻訳戯曲を使用することが比較的多いです)
以下の感染症防止対策を取ります
- 体温37.5℃以上ある場合、また風邪症状がある場合は参加を見合わせていただきます
- マスク着用は任意とします
- 常に換気をします
そのほかにも、状況に応じて主催者が必要と見なした対策を実施する場合があります。
対象
俳優
新しいものを吸収し向上するために真摯にチャレンジする意志のある方。マイズナーの経験がなくても大丈夫です。
日時
6月 | |
4日(火) | 10:15~17:00 |
5日(水) | 10:15~17:00 |
6日(木) | 13:00~17:00 |
8日(土) | 10:15~17:00 |
10日(月) | 10:15~17:00 |
11日(火) | 13:00~17:00 |
13日(木) | 10:15~17:00 |
15日(土) | 10:15~17:00 |
17日(月) | 10:15~17:00 |
NG、遅刻・早退は基本的に可といたします。オーディションや稽古、撮影と重なる等、事前にご相談ください。
会場
最寄り:東高円寺駅のスタジオ
参加費
35,000円
- 「リピテション割引」 2,000円引き
これまでに西村壮悟によるマイズナーワークショップに参加したことがある「リピーター」の方対象 - 「早期割引」 2,000円引き
5月10日までに参加費ご入金がお済みの方
※1との併用可 - 「U25割引」 30,000円
25歳以下の方 - 「学割」 30,000円
30歳以下の学生の方
※養成所所属の方は週3日以上クラスがあることが条件
参加
お申し込み方法
以下のフォームからお申し込みください
https://forms.gle/4jNHGtVf7Zcpf5zDA
その後、こちらから返信いたしますメール記載の銀行口座に参加費をお振り込みいただき、ご入金の確認が取れた時点で、ご参加が確定し、参加枠が確保されます。
フォームからのお申し込みだけではご参加確定とはなりません。お申し込み時に空きがあってもご入金まで間が空いてしまった場合、後から申し込まれた方が先にご入金され、枠が埋まってしまうこともありますのでご注意ください。
※お申し込み後、2日以内に
so5246ra@gmail.com
よりお申し込み完了のメールをお送りします(迷惑メール設定で弾かれないようにしてください)。万が一、3日経ってもメールが届かない場合はお手数ですが上記のメールアドレスへお問い合わせください
キャンセルポリシー
ご参加確定後にアンケートをとり、プログラムとシーンを準備します。
(お申込みがギリギリになるとアンケートを省略させていただく場合があります)
・開催9日前までのキャンセルは、ご入金いただいた参加費全額返金。事務手数料1000円を差し引いて返金いたします。
なお、WS開始8日前以降から以下のキャンセル料を頂戴します。
・5月27日以降 参加費の25%
・5月30日以降 参加費の50%
・6月1日以降 参加費の100%
NG、早退・遅刻は基本的に可(最終日・6月17日のNGを除く)といたしますので、シーンワークのペア決めのため分かり次第ご連絡ください。
定員
約12名 先着順
最少催行人数を6名とさせていただきます。参加者が6名以下の場合は各日の時間を短縮、または開催をキャンセルさせていただく場合があります。
これまでのワークショップ参加者の感想
僕が何よりも収穫に感じたことは、リピテーションのワークの延長線上としてテキストに取り組むことができ、そしてその効果を強く感じることが出来たことでした。
相手役から入ってくる情報量が格段に上がり、そこから生まれる衝動にちゃんと気付く、そしてそれに従うことを自分に許す、
そうしても大丈夫なんだと知ることが出来ました。
ホリユウキ『温室の前』『長い墓標の列』
稽古場に、利害関係がなく、萎縮したり威圧されたりが皆無で、もうどれくらい久しぶりにこんなに自分のためだけのレッスンを受けられてるか、、、思い出せないくらいです。うまくいかないことも恐れず、試す場所がもてて、ほんとにラッキーでした。
間瀬英正『コントラ』『ベランダ』
『僕は、素直で良いのだ』
一番の収穫だと思います
人間の動物性(野生)を自身で認識し許せたとき、初めてコミュニケーションの根源、その入り口が開くんじゃないかなと感じました
本能的であればあるほど、行動と目的の核が自ずと拾えてくる
そこから人間性(社会性)をくっ付け始めて、生活の中に居るワタシに成っていくのかなと
時間がかかるけど、一切無駄が無い
技術に昇華されたとき、きっと物凄い速度でその過程をクリアし、戯曲の、生きた人としてアナタと対面できる気がしました
関淳平『いだてん』『LAST & SEX』
自分の中の演劇の仕方みたいなものが、煮詰まったり凝り固まっていたと思うのですが、少しずつほぐれてきて良かったです。頭が強い人にほどおすすめしたくなるWSでした。
だんだんと心も身体も開放的になり、自分に嘘をつかなくなってきて、語彙も増えました。また、シーンをやる上で必要な準備(主に読解)がシンプルになって良かったです。
小川結子『文化住宅の窓際にはマーガレットを』『長い墓標の列』
濃密な時間を過ごせてとても楽しかったです。
撮影と被ってしまうこともあり、課題にしっかり取り組めるかどうか不安もあったのですが、逆に集中が増してとても身になる日々を過ごすことができました。
今まで台詞をこんな短期間で身に染み込ませられたのは初めてでした。
それはワークのやっていった順番が効果的だったことや、それを素直に受け止めてやることが出来たからだと思っています。
今まで様々な場所でやった事がやっと実を結んだ感覚を覚えました。自分の芝居の大きな指針にしていきます。
本多晴『ドラゴン桜』『半沢直樹』
シーンワークに関していえば、
結局考えていたことを手放してその場の衝動にかなり流された(そのあとのフィードバックで良いことだと指摘してもらいましたが、自分でもそう感じています。)のが非常に面白かったです。流されたけど、シーン理解を進めていたことと相手に任せていたことで、逆にアンカーが付いていた感覚というか。
三原一太『SHINE SHOW!』『いちペディア』
僕はどうしても芝居中自分を客観的に見過ぎてしまう癖があり怒りのシーンや悲しみのシーンがしているフリになってしまう傾向にありました。
それが今回、ダイアローグでもモノローグでも素直に心から思ったセリフを言うことが出来ました。
西村さんは教えると言うよりも一緒に考えてくれるタイプの方だったため自分で発見ししっかり噛み締めることが出来ました。
ー安童有都 『広すぎた檻』『虫篭』
辿っていったステップが有効だったのか、安心して参加できる環境・関係が育っていってか、いずれにしろ自分にとってフィットする構成、ファシリテーションだったようで、想像以上に自分の内面や体が素直に開いていってくれました。そうごさんが参加者の様子や、状況を丁寧に見ながら、適切なフィードバックや進行(案内人、というイメージなのですが)をじっくりとしてくださったからこそと思います。「頭で考えてしまう傾向がある」という自分自身の認識を超えて、「ちゃんと相手のことを聴き、感じて、自分の体や心が動いている。それによって言葉(セリフ)を発したり、動いたり(動かされる感覚)、しているな」と思える状態を経験できたことが驚きで、また、「決してできないわけではなくて、そのチャンネルをつなげていくことはできるのだな」と思うことができました。
ー田渕瀬那『2番目でもいいの』『ハリケーン・マリア』
マイズナーワークショップ講師プロフィール
西村壮悟 (にしむらそうご)
小劇場から商業演劇まで幅広く出演。文化庁新進芸術家海外研修制度で2017年から約一年間ロンドンに留学。ジェレミー・ストックウェル氏、スコット・ウィリアムズ氏、木村早智氏に師事。帰国後ホスピタルシアタープロジェクトに参加し、主に障碍を持つ子どもと家族のための演劇を創作。久保田恵氏、スコット・ウィリアムズ氏といった海外の優れたコーチを招聘し、俳優や俳優指導者に向けたワークショップを開催。エイベックス・アーティストアカデミー講師。
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