東からの陽光が温かさを与えてくれる、そんな朝。
こつこつプロジェクト『テーバイ』の本番初日の朝。
「初日おめでとうございます」と楽屋で言うのだろうか、なんてふと考える。
この企画は、ひとつの作品を通常の稽古よりも時間を重ねて練り上げていくという企画で、
一般のお客様には見せない。各劇場の制作など、関係者に向けて上演し、もしも声が掛かれば・・・
というもの。
それでも初日。
前回舞台に出演したのは2020年の9月だったから、1年以上空いている。しかもあの時はスタジオ公演。今回は新国立の小劇場、空間の大きさ、照明の強さに随分な差があり、場当たり稽古では苦労した。
自分でも出来てないと思うところがたくさんあり、正直不安はだいぶある。
こうやって書くのも誰かに読ませるためではなく自分の気持ちをこれからに向けていくため。
去年の6月から1st, 2nd, 3rdと3期の稽古をしてきた。
オーディションで言えばちょうど一年前くらいになる。
演出の船岩祐太や制作サイドからすれば、それよりもかなり前から進めてきた企画。
それが今回、劇場で形になる。
劇場と言えば、この舞台に立つのは僕にとっては実に7年ぶりとなる。
7年のあいだに僕の人生は大きく変化した。
『アルトナの幽閉者』の稽古後、飲んでいるときに岡本さんに「子どもが欲しいなって思ってるんですけどちゃんと育てられるか・・・」と聞いたら「大丈夫だよ」と言ってもらったことなどを思い出す。
あれから日本を離れたり、海外で子育てしたり、留学したり、役者のことだけ考えると紆余曲折しまくった。あのとき共演した一期上の先輩はもう別の仕事をしている。
7年も経つのかと唖然ともするが、またここで芝居をやらせてもらえるのが嬉しい。
そして、そんな僕の思いよりも、それを作った人間のもっと大きな思いのつまった戯曲と、仲間たちと作ってきた作品が目の前にある。
あと少しだけ。
あと少しでも、近付きたい。
たとえ微力だとしても。
たとえ時間は限られていても。
たとえ突然コロナで断ち切られたとしても。
あと少し。