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『白い本のなかの舞踏会』

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多感覚演劇『白い本のなかの舞踏会』の年内の公演が終わった。

ご来場いただいた皆さま、
本当にありがとうございました。


シャロームみなみかぜという、新宿弁天町の施設を会場としてお借りしての公演。
こんなにもお客さんに直接関わるパフォーマンスは自分にとってははじめてで、
返ってくる笑顔に、こちらの心もじわ~っとなる瞬間がいくつもあった。
(公演の様子が分かる画像はこちら)

「障がいを持つ子どものための」と言っても、症状は様々で、
親御さんを含めて、どういう距離感で関わるかというのは、
まだまだやり方があるはずだと感じた。
その点、何回も出演している共演者を見ると間の詰めかたがさすが。

雨が降ったりと寒い二日間だった。
残念ながら当日に体調を崩して来られなかったお客さんも。
そんななか、ストレッチャーやバギー、呼吸器、吸入器を必要とするお子さんも来てくださった。
ただでさえ外出するのは大変なのに、感染症のリスクが高いこの時期に楽しみにして、来てくださったことには、ただただ感謝するばかりだ。
「外出するのは大変」なのも、症状によってまた違う。
身体的な脆弱さだけでなく、
慣れない環境が苦手な場合もあるし、刺激に対して突然予想もつかない反応をして親も止めるのが難しい場合もある。
いずれにしても当事者の立場になってはじめて分かることだ。
ただ、そういう人もいるということが、常識になるべくなっていくように、いわゆる健常者も努力したい。


そうやって来てくれたお客さんが、子どもも大人も、
笑顔を輝かせてくれた瞬間には、
表情はたいして変わらなくても身体で反応してくれたときには、
僕の心も深く動かされた。

「やってよかった」とか「うれしい」とも違う、
なんと言えばいいのか、
「この場に一緒にいられて有り難い」なのかもしれない、
そう心が動かされた。

お子さんの状態や他の理由で、ひょっとするとリラックスして楽しめない方もいるかもしれない。
パフォーマンス自体にはそこまで興味が持てない方もいるかもしれない。
パフォーマンスだけで何かが劇的に変わるわけでもないかもしれない。
ただ「あなたは独りじゃない」と思う。

とにかく、僕らができるのは子どもたちとご家族が、この時間を安心して楽しんでもらえるよう、最善を尽くすこと。
まだ改善できることはあるはず。




健常者の方へ。

この舞台作品を観てもらうことが、
知ることにも、この活動を支えることにも繋がります。
知らないから、どう関わっていいか分からないままだし、
偏見も残ったままだし、
なんせ各回6組の親子限定で体験の質を保つことは必要なので、チケット収入が増えると大変助かります。
ぜひ、観に来てください。「見学」というかたちで観ていただけます。
演劇にたずさわる人たちにも観てほしいです。

芸術のための演劇、娯楽のための演劇、社会のための演劇、色々ありますが
言葉を使わない多感覚演劇にも可能性があります。
ふつうの子ども向け演劇との違いも見てもらいたいです。

じっとしていられなくても、声をだしてしまっても
座っていられなくても、大丈夫。
寝転がっていても、バギーのままでも、大丈夫。


そんな演劇がもう少し増えてもいいじゃないですか。


ちなみに、イギリスだと劇場でできるこういう公演が、
日本では「舞台と客席は分けなければならない」という劇場法で、打てません。
だから、バリアフリーとか設備の整っている障がい者のための施設でやることが多いのです。
でも、この時点で日本の劇場は先がないなって思いませんか?
なんだかんだ縛られて、新しいお客さんが作りにくいまま。
そして障がいを持っている人は社会のなかで可視化されにくいまま。
どちらにとってもハッピーじゃない。
これは別に障がい者に関わることだけじゃないと思います。



今回の作品のことをもう少し。
一月にも公演があります。

作品には俳優だけでなくバレエダンサーも登場します。
至近距離でバレエダンサーの美しい踊りを観られるのはなかなかないですよ。
見とれてしまったという親御さんの感想もありました。

音楽も素敵なんです。
色々な楽器が出てくるし、
クラシック音楽だけど即興なので、
子どもたちの反応やパフォーマーに合わせてどんな演奏になるか楽しめます。

あなたがもし、俳優か音楽家かダンサーか人形つかいか、ジャンルがなんであれ、
とにかくライブが好きなパフォーマーであれば、
自分たち自身で創造するのが好きなら、
きっと気になるはず。

そして自分もやりたいと思えば、新しく作ってもいいし、
あるいはこのカンパニーの仲間になるのもいい。
より面白く楽しく、質高くやれる人がやれば素敵。
僕よりももっと上手く素敵にできる人がやってくれたら、それでいい。



まだ枠が埋まってない回もありますので、
家族連れの方たちも、見学の方もぜひ公演情報をチェックしてください。

一月にはTYAインクルーシブアーツフェスティバル2019にも参加します。
海外からの招聘作品もあります。
ホスピタルシアタープロジェクトの他にもすんぷちょという仙台の劇団が五感で楽しめる演劇を上演します。
自閉症の子ども向けに作られたと書いてありますが、そうでなくてもご来場いただけるそうです。
様子が分かる映像もありますよ。




仲間たちがスロベニアで日本の昔ばなしを上演する公演が1月から始まる。

僕も2016年に第一回に参加した、自分たちで創造したいという思いで作られる作品。
今回参加できないが僕も応援している。
そして自分が今向き合っている『白い本のなかの舞踏会』を
より楽しんでもらおう。