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Stay Young, Stay Curious

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ロンドンで通っていたマイズナーのインパルスカンパニーにはドロップインクラスもあった。
毎週金曜の午前中にコースを修了した人だけが参加できる、リピテションのクラスだ。
当時僕はまだコースを終えてなかったが、見学というかたちで何度か参加させてもらった。

様々なキャリアの人が来ていて、力のある人同士がやると、朝からでも激しく、自由に変化するやりとりが見られた。
彼らは皆共通して、相手への観察力と、観察したものを瞬時に言葉にする力が非常に高く、
何よりも相手へと踏み込んでいく勇気と相手を動かそうとする強い意志があった。
僕は見学者だったが、参加者が超満員でない限りはリピテションに参加させてもらっていた。
コースを終えて、現場で仕事をしながら継続的にリピテションを続けている俳優たちと一緒にリピテションをするのは、本当に良い刺激になった。蜂の巣のようにボロボロにされそうになることもあった。

そのなかに、ジャスティンという素敵な俳優がいた。
ジャスティンは長身で優しそうな顔をした、チェックのシャツやツイードのジャケットあるいはコーデュロイのパンツが似合うようなイギリス人男性。しかしきっと衣装を着れば、貴族や政治家の大物(保守党)のような、厳格で計算高そうな役も合うだろう。
毎週のように、ロンドンの外から朝10時のクラスにやって来る。
彼は80歳を超える「おじいさん」だった。

しかしジャスティンはそのドロップインクラスにいる誰よりも若い心を持っていた。

リピテションをしているときの彼の表情は毎瞬間コロコロ変わった。
相手の手を取り喜んでいたかと思うと、顔を真っ赤にして怒り狂い、次には相手に怯える、
といったように、本当にどこにでも行けるようだった。
それも相手からの刺激をちゃんと受けての変化で、相手に対する好奇心と驚きを常に持っていた。

そう、まるで小さな子どものように。

いや、本当にまるで子どもだったのだ。
若者のように俊敏ではないが、転げたりもしながら身体をめいっぱい使って、その瞬間相手から感じたことを表現する彼を見てて、誰もが「子どもみたい」と思ったろう。もちろん良い意味で。
肉体は80台だが、一旦俳優としてフォーカスすれば精神は小さな子どものよう。
彼が相手と関わっていると、誰もが引き付けられもっと見ていたくなる。
そして、人間の持つ可能性に触れている喜びを感じる。


同じ日にドロップインを見学していたマルコとショーンは、ジャスティンみたいに相手とリピテションをやること自体に喜びを、そして好奇心を持って向かっていくことを「ジャスティンモード」とか言って試していた。



今、ワークショップのことや、俳優や人としての自分のことを考えながら、ジャスティンのことを思い出した。
彼のようなマインドはどうやって育てることができるのだろうか、と。