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ロンドン節約食生活

2015年や現在と違って、僕が留学していた2017~18年、対ポンドはまだ130、40円台だったかと記憶している。

と言っても、僕は資金をあまり準備できず、文化庁から支給される費用もだいぶレッスン代につぎ込んでしまったので、あちらに行って1ヶ月ほどして「あれ?これは思ってたよりお金ないぞ?」と焦って計算し直さなければいけなくなった。

家計アプリで毎日の支出を、コーヒー一杯からつけた。

「在外研修は遊びに行くようなものだ」とか誰かが言ってたのを聞いたことがあるが、それは違うと思う。
少なくとも俳優は研修するのに、大抵の場合レッスン費用がかかる。
その金額は決してお安いものではない。(内容を考えるとそれでも受ける価値がある)

抑えるところは抑えて、芝居のチケット代を捻出する。
目を向けるのは、やはり家賃、食費だ。

住居はまずシェアフラットになるだろう。留学してるのに日本人が多いフラットには住みたくなかったので、在英日本人の情報サイトでは探さなかった。(相場が高く、しかも大人しい日本人をカモにするようなものも多い)
住みたい人に対して住居は不足しているので見つけるのになかなか苦労したが、
結局£500/月でZone1、近くにBrick LaneやOld Spitalfields Market、Liverpool Street Stationというターミナル駅があるフラットに住むことができた。これはなかなか無い好条件だと思う。
それもリビングなしの狭い部屋で食事はパソコン置いてる机で、だったが。あと、フラットメイトの一人はDJでズンズン重低音が聞こえていた。もひとつ言うと、ガレージでは若者がたむろして、夜中はよくマリファナを売ろうと声をかけてくるような場所だった。
古いフラットで、住人は全員男。汚かった。気づいたものが掃除する、ゴミ出すという形式で、いつまでも掃除しないパターンだった。「ゴミの分別」という概念は僕以外誰も持ち合わせていなかった。
5部屋あってトイレは2つあったが、僕が入居したときは片方は物置になってた。バスルームが朝埋まっててあやうく漏らしそうになったから、物置をなんとか用足せる状態にした。それでも掃除機とスーツケースのあるトイレでうんこすることは人生でもう二度とないだろう。


さて、食事のはなし。
ほんと、外食することは少なかった。
「なぜおれは海外に来ても、いつも安い食材しか買わず、お決まりの自炊生活をしているんだ・・・?」」と時々むなしくなることもあった。自分一人のために作るのでどうしても最低限なものになる。

それでも安くて美味しいものを見つけるのは楽しくもあった。

米はフライパンで炊いてたが、フラットメイトのフライパンを焦がしてしまってキレられたことがあった。brown rice(玄米)やpearl barley(ハトムギ)を混ぜたりした。
それに肉や野菜を適当に入れたあんかけをかけて中華丼にしたり。あんかけはトウモロコシのスターチなので普通のスーパーでも手に入る。

異国での食生活の大きな味方は中華食材屋だ。チャイナタウンで豆板醬、オイスターソースや乾燥ワカメ、そしてうどんのような麺を買ってくる。その麺を、日本から送ってもらったうどんスープに入れて食べると心も温まった。
あと、染みるようなソウルフードと言えば、インスタントラーメン。出前一丁だったかが近くのTescoで一つ50ペンスくらいで買えた。いくつか味があって日本では見ないようなものもあったが一番美味しかったのはTonkotsuで、これがたまに食す「悦び」だった。


日本食以外でも安くて美味しいものはもちろんあった。

まず思い浮かぶのはパスタ。基本的に食品は全て日本より安いけど、パスタはバカみたいに安い主食。大きな鍋に数人前作って翌日も食べたり、お昼に持って行ったりした。まぁ味は落ちるけど。ペンネやフジッリなどのショートパスタだと柔らかくなってもさほど気にならない。
アラビアータにしたり味噌を入れても美味しかった。


パスタに入れるのも適当な野菜。肉はひき肉が多かった。やっぱり安いので。
あちらでは牛肉と鶏肉が人気で品数が多かった。鶏はもも肉よりむね肉の方が人気で値段も上だった。(健康志向?その割にはジャンクフードが多くて肥満な人も多いが)
豚肉は品数が少ない。薄切り肉は一切なくて、調理すると固くなりやすいのでバラ肉を買っていた。

加工肉も安い。ソーセージはイギリスのものは一回食べたけど不味かったが、ドイツのものは美味しかった。ベーコンは日本のものとは違う生ベーコン(日本のものは加熱殺菌している)で、僕は前者のほうが美味しいと思う。ちなみに豚薄切り肉の代用品にする人もいるらしい。

もう一つ「日本じゃこんな安く買えない」ものはチーズ。かたまりで安いものは£2から。美味しいチェダーチーズをナイフで切ってパクパク食べながら料理したりできる。違う種類のものも安い。

僕はそんな飲めないのでたまにしか買わなかったがワインも日本よりは安い。ビールは日本と同じくらい?エールなどの種類が豊富。アル中は大五郎みたいな容量で度数高めのサイダー(リンゴ酒)を買っていく。

他によく利用したのは冷凍ピザ。ICELANDや他のスーパーで最安だと£1.5~2で買える。「イタリア製造」というものを選んで買ってたがそれでも£2台だった。これをレンジ解凍して、絶対に備え付けしてあるオーブンで焼き目をつける。これにソーセージ足して生野菜も採れば満足だった。

朝食は簡単に、シリアルとグラノーラにバナナやリンゴなどを足して、グリークヨーグルト(これも日本みたいに高級品じゃない)。それにハチミツをかける。非加熱でオーガニックのハチミツが(普通のハチミツよりは割高だが)日本より断然安価で手に入る。


ジャンクフードが多いと書いたが、スナックではKettle Chipsをよく買った。余計な化学調味料が入ってなくて美味しい。脂質は高いけど。クッキーも美味しい。種類が多くてクソ甘いもの、ジャンクのなかでもよりジャンクなものも多い。

ナポリ出身のフラットメイトがおすそ分けをしてくれたこともある。そう言えばボロネーゼはトマト入れてなかったな。


何かよく分からない豆の料理を作ってて、どうにも臭く感じたことがあった。あれは何だったんだろう。反対に僕が醤油使って何か作ってたときに「臭いからキッチンのドア閉めてやってくれ」と言われたこともある。

人によって好みや食の重要度は様々だけど、美味しいものを食べるのが活力につながったと思う。

イギリスの大学に通って、メンタルを病んで鬱になった人がいたけど、その人を日本食屋に連れて行ったことがある。味噌汁を飲んだとき、その人はだいぶ緊張が解けたみたいだった。「こっちで初めてだった」と言っていた。