9日間の短期集中WS「集中コース」ではマイズナーテクニックの基礎から応用編、そして台本を使ったシーンワークまでやる。
9月に行った集中コースでは、これまでよりも基礎にかける時間を多くとった。
このテクニックの原則「何が起こるかは相手がすることによる」つまり、自分の意識を自分自身に向けるのではなく相手に向けることを徹底させ、相手を観察するなかで生まれた衝動のままに反応することを探求していく。すると俳優は演技しようとすることから離れるようになる。
感情は作り出すものでも表現しようとするものではなく、相手と関わるなかで生まれるもの。とは言っても、ついそれで十分なのかと不安になり、癖でやろうとしてしまう。あるいは、社会生活で身につけてきた様々な制限ー外からの刺激をスルーしたり、感じるのを避けたり、本当に感じていることを誤魔化したり。
そういったものを手放したら、俳優として衝動的で力強さが出てきて、結果としてその人らしさが見えてくるようになる。
台本をやるときも、書かれた台詞よりもその瞬間目の前の相手から受け取って反応する姿が見られるようになる。
まるで台詞の書かれた即興のように、何が起きるかは分からないような空気がある。
WSで俳優を見ていていくつか思うこと。
シーンワークがどれだけ発見の多い密度の濃いものになるかは、それまでの基礎でどれだけテクニックを積み重ねてチャレンジできるかにかかっている。
シーンワークでは、言葉に非言語的なコミュニケーションが付け足されて、俳優自身も驚くような心の動きが生まれる。
マイズナーテクニックに関しては、演技経験の多寡は問題ではない。
演技経験が多かったり年齢を重ねている場合、人によっては誤魔化したり上手くやることから離れるのが難しく、テクニックの習得が難しくなることもある。しかしそれは若い人や経験の浅い人でも同じ。
演技経験が豊富な俳優は、今やっているエクササイズが何に繋がるかを見つけやすい。また一旦テクニックが身につけば、その俳優がこれまで培ってきた他の様々な技術と合わせることもできて、演技がより魅力的になる。それは一種のペイオフで、これまで投資してきたものが報われるような瞬間だ。
俳優一人一人がその場に貢献することができ、場全体が成長することで一人一人が得られるものも大きくなる。
意識を他者に向けている俳優は美しく見える。